孫正義が支援する「若き異才」96人 精神医学、物理学、プログラミング――。知られざるエリートたち【全文公開】――文藝春秋特選記事

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10/5(金) 17:00配信 有料

ソフトバンクグループ会長 孫正義氏

 初夏の日曜、渋谷の明治通り。賑やかな通りに面した新しいビルに10人ほどの若者が集まっていた。

 光量が抑えめのオフィス然とした一室で彼らが議論していたのは、ドイツの哲学者マルティン・ハイデガーによる存在論だった。プレゼン資料が映されたスクリーンを前に、登壇者の女子は英語と日本語を混ぜながら話をしていた。

「その……、彼が一番伝えたかったことは『私たちの力では解決できない不思議がある』ということだと思います。何もなくてよかったところに何かがあるという不思議。なぜそこにあるのかを感じるとき……」

 話の途中、スクリーンを見ていた数人が声をあげた。

「そうなのかな?  あのー、普通の人はそこに何かがあること自体を問わないと思うんですよ。物理では、ボールをこう投げたらこう落ちるということは解明しますよね。けど、そのボールを“なぜ”投げるのかは問わないんですね」

 登壇者の女子が待ち構えていたように切り返す。

「それはいいポイントで、それもハイデガーが語っているんです。ある法則を理解することで『なぜ』を聞かなくなってしまっていると。思考のすべての土台には不思議があるのに、それを多くの人がわかっていないんじゃないか、それをハイデガーは危険と指摘してるんです」

 登壇していた女子は1997年生まれの古川あかりさん。幼少期を米国で過ごし、日本の高校に進学、現在米ハーバード大で歴史や哲学を専攻する学生だ。

 疑義を呈していた男子の一人は、2000年生まれで高校一年で高校卒業程度認定試験に合格、独学で8カ国語(日英仏西中韓伊とポーランド語)をマスターし、通信制のNHK学園高等学校を卒業した、佐藤和音(かずね)さんだった。

 英語と日本語が混じりながら、早口で議論は進んでいった。当の若者たちに気負いらしきものは見えない。学校も居住地も、年齢すら異なる彼らが属しているのが、孫正義育英財団。ソフトバンクグループ会長の孫正義氏が設立した財団だ。

 2016年12月、孫正義育英財団は孫氏個人の資金によって設立された。

〈「高い志」と「異能」を持った若者に自らの才能を開花できる環境を提供し、人類の未来に貢献する〉

 財団のホームページを見ると、スケールの大きい言葉が並んでいる。

 活動内容を紹介するページには「未来を創る人材への育英事業」など、「未来を創る」という言葉が繰り返し記されていた。 本文:9,169文字 写真:7枚 孫正義が支援する「若き異才」96人 精神医学、物理学、プログラミング――。知られざるエリートたち【全文公開】――文藝春秋特選記事(文春オンライン)孫正義が支援する「若き異才」96人 精神医学、物理学、プログラミング――。知られざるエリートたち【全文公開】――文藝春秋特選記事(文春オンライン)孫正義が支援する「若き異才」96人 精神医学、物理学、プログラミング――。知られざるエリートたち【全文公開】――文藝春秋特選記事(文春オンライン)孫正義が支援する「若き異才」96人 精神医学、物理学、プログラミング――。知られざるエリートたち【全文公開】――文藝春秋特選記事(文春オンライン) ...

森 健/文藝春秋 2018年9月号

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