登場人物ほとんどクズ! 「1億かせぐ小学生になりたくはないか?」 月ノ美兎が語るヤバイ少女漫画『秘密のチャイハロ』

なかよしで連載中

 バーチャルYouTuberの月ノ美兎(つきのみと、愛称:委員長)が気になったコンテンツを紹介するコーナーです。月ノ美兎はかつてねとらぼの企画で“クリオネ”を食べたことがあります。

【画像:ホラーのような少女マンガ】

 今回取り上げるのは『なかよし』(講談社)で連載中の少女漫画『秘密のチャイハロ』。原作は放送作家の鈴木おさむさん、作画は桜倉メグさんです。8月9日に第1巻が発売された同作は、「子どもの貧困」「小学生の格差社会」をテーマにスタートしたといい、低年齢向けながら非常にインパクトのある内容となっています。以下、対談形式でお届けします。

あらすじ

主人公の愛(あい)はいつも前向きで元気な女の子。病気がちの母親と二人暮らしで、お金はない。「貧乏」を理由に学校でバカにされる日々だったが、ある時イケメンの先生に秘密のチャイハロの話を聞く。そこでは大金がもらえるものの、おそろしい仕事を依頼されるという。なんとか愛は面接を突破し、チャイハロで働くことになるのだが――

月ノ美兎:こちらがヤバイ漫画『秘密のチャイハロ』です。チャイハロとは「チャイルド・ハローワーク」。選ばれた子どもだけが行ける、高収入のヤバイ仕事を紹介してくれる場所です。

ねとらぼ:し、少女漫画なんですよね?

月ノ美兎:はい。テーマは「子どもの貧困」らしいですよ。

ねとらぼ:重い。原作は鈴木おさむさんで、ドラマ「奪い愛、冬」(2017年)を見たなかよしの担当さんが漫画作りを依頼したそうですね。

月ノ美兎:連載時は扉絵によく「圧倒的No.1」と書かれています。『カードキャプターさくら』を凌ぐんですかね。鈴木おさむ作品といえば、私は「芸人交換日記」(舞台版)が好きです。オードリー若林さんと田中圭さんが主演で、最後にある場所でする漫才がふつうに面白い。

ねとらぼ:なるほど……。実に委員長向けな漫画だということがよくわかりました。

月ノ美兎:主人公の貧乏っぷりが結構すごいですよ。1話早々、愛ちゃんが6着の服を着回ししているところをクラスメイトが雑誌にまとめちゃうんです。こんな凝ったいじめ、あまり見たことない。

ねとらぼ:無駄にクリエイティブですね。

月ノ美兎:お父さんが借金を作って他の女の人と逃げちゃって、お母さんは一人で育ててくれたけれど、愛ちゃんが4歳のときに事故で右足が動かなくなって、体も弱って病気がちに。それで親戚の雪江(ゆきえ)さんが住む場所を貸してくれてるけれど、物置なうえに家賃も払えてないんです。

ねとらぼ:これはもう、国の保護のもとで生活した方がいいのでは……?

月ノ美兎:雪江さんは一瞬普通の人そうにみえてすごいんです。この顔とか。

月ノ美兎:「あなたたちは死ぬまで不幸のまま ずぅっとわたしに家賃をはらいつづけるのよ!!」

ねとらぼ:悪魔じゃないですか! これを小学1~2年生が読んでいると。

月ノ美兎:ヤバすぎますよね。「なかよしはチャイハロがあるから読んじゃいけません」っていう人もそのうち出てくるんじゃないですか?

(笑)。

月ノ美兎:チャイハロの場所もすごいですよ。図書館でカチッと本を入れるとゴゴゴゴと出てくる。夢のある登場の仕方です。

ねとらぼ:ツッコミどころはありますが、王道的な少女漫画っぽい展開ですね。

月ノ美兎:働くためには面接に合格しないといけなくて、落ちると『カイジ』の星がなくなっちゃった人が行くような部屋に連れて行かれちゃうんですね。

ねとらぼ:子どもがめちゃくちゃ泣き叫んでる……。

月ノ美兎:そして面接になると「1億かせぐ小学生になりたくはないか?」と聞かれます。

ねとらぼ:1話目から話のスケールがデカい。

月ノ美兎:キャラを立たせるためにリンゴを食べている感じがよいですね。

月ノ美兎:面接では愛ちゃんが大嫌いなゴーヤを食べさせられるんですね。全部食べたら3万円やる、と。「でも、これ生…」って言ったら「貧乏人が好き嫌いしてんじゃねぇよ!」って言われる! 貧乏人が好き嫌いしてんじゃねぇよ……人生で1回言ってみたいセリフですね、うふふ。

ねとらぼ:好き嫌いの問題ですかね、これ……?

月ノ美兎:それで愛ちゃんは「これをゴーヤだと思うな 諭吉だと思え」と言われて食べさせられるんです。格言ですよ。

ねとらぼ:……。どうですか、この食事シーンは?

月ノ美兎:かっこいいですね。ゴーヤの作画も丁寧だし、このリョナ顔……!! 「胃の中でゴーヤが暴れているみたい」という愛ちゃんのグルメレポートも味があります。

ねとらぼ:そんな読み方をするのは委員長だけでは(笑)。

月ノ美兎:なかよし読者はこういうドSな男の人にときめいちゃうのかもしれないですね。このエピソード(MONEY.2)の後編では雪江さんがわざわざお弁当を作ってきて、目の前で犬に食わせるといういじめを披露するんです。

ねとらぼ:また手の込んだ嫌がらせが……!

月ノ美兎:愛ちゃんのことを考えて、愛のある……。雪江さんの能面顔は印象的ですね。

月ノ美兎:実は、この犬と愛ちゃんは仲が良いんです。そしていい話を挟んで犬への愛情を高めてから、初めての仕事として「(別の)犬の処分」を命じられてしまう。

ねとらぼ:展開がエグい……! 引きが上手ですね。

月ノ美兎:放送作家ならではの、ドラマの引きですからね。ターゲットの犬はリンゴという名前で、飼い主の梨子(りこ)ちゃんは愛ちゃんと同じく貧乏で母子家庭。お母さんがお金持ちのお父さんと再婚するんですが、そのお父さんが大の犬嫌いで、チャイハロに「リンゴの処分」を依頼するんです。それが愛ちゃんに回ってくる。報酬は10万円です。

ねとらぼ:これは悩ましい。

月ノ美兎:でも、愛ちゃんは指令に背くんですね。そしたら仕事放棄扱いされて炎に焼かれそうになってしまいます。

ねとらぼ:罰が重すぎません?

月ノ美兎:また説明もなくリンゴを食べる人が出てくるんです。犬ごとき処分できないとこうなっちゃうという。

月ノ美兎:愛ちゃんが10万円で犬の処分を命じられた一方、愛ちゃんのお母さんは1個2円のバラ作りという内職を始めるんです。でも、できた花は全部雪江さんたちに燃やされちゃいます。

ねとらぼ:昼ドラだ……。

月ノ美兎:完全に「牡丹と薔薇」ですね。あの能面顔は息子にも継承されてるんですよ。

ねとらぼ:ピンチになった愛ちゃんは何やかんや助かるんですよね?

月ノ美兎:ある人が助けてくれます。リンゴの方は……愛ちゃんが梨子ちゃんに問いかけます。「リンゴと今の幸せどっちを選ぶの?」と。あぁ、かっこいいですね。犬を手放すか、お金を取るか。

ねとらぼ:究極の選択ですね。どっちを選んでも誰かが不幸になりそうな……。

月ノ美兎:ふふっ、そうしていたらリンゴが自分から去ってくれるんです。梨子ちゃんに「ぼくはだいじょうぶだよ」と言って。

ねとらぼ:ええっ!? これ、犬に勝手にアテレコしているわけではないですよね。

月ノ美兎:都合のいい展開ではありますね。涙をなめてあげてますしね。全然関係ないんですけど今日犬を飼う夢を見ました。ちっちゃいチワワでかわいかった。

ねとらぼ:さらっと犬の問題について流された。

月ノ美兎:愛ちゃんを炎に落とそうとした子は強(つよし)といって、彼は両親を失っています。

月ノ美兎:愛ちゃんは自分を本気で殺そうとした強に対しても「ほんとうはやさしいんだってちゃんとしってるから」と言います。

ねとらぼ:愛ちゃんはマザー・テレサか何かなんですか?

月ノ美兎:冷静に考えるとこのノリ、殺されかけたのには釣り合っていないですよね。愛ちゃんはよく性格が荒まなかったなと思います。

ねとらぼ:なるほど……強の行動にもいろいろ理由があるんだと考えるんでしょうね。

月ノ美兎:やっぱりお母さんがいい人だからでしょうね。お母さんといえば、こっちのエピソード(Money.4)では愛ちゃんが買ってきたいいお肉が雪江さんに見つかって、生で食べさせられるんですよ。

ねとらぼ:お母さんいじめがひどい。

月ノ美兎:愛ちゃんがお肉を買ったスーパーでは晶子(しょうこ)ちゃんというクラスメイトのお母さんが働いていて、紆余曲折あってそこの万引き犯と間違えられた愛ちゃんに対して、晶子ちゃんがつばを吐きかけるんですね。このつばがコマとコマの架け橋をしています。

ねとらぼ:この世界は大丈夫なんだろうか。

月ノ美兎:これ貧困や格差社会というテーマ以前に、愛ちゃんたちがやられていること、全部証拠写真撮って警察に突き出せばそれなりの対応をしてもらえる気はしますね。

ねとらぼ:雪江さんも「家賃を払え」って言ってたのに内職の花を燃やしたり明らかにおかしいですよね。その分、一つ一つのシーンは強烈なインパクトがありますけど。「昼ドラあるあるの幕の内弁当」みたいな。

月ノ美兎:制作陣はどれくらいガチなんですかね。あと鈴木さんはどういう形で桜倉さんとやりとりしているんだろう。ネームを切っているんだったらぜひ見てみたいです。文章で渡してるとしたら、桜倉さんは爆笑しながら描いてるかもしれないですね。

ねとらぼ:そろそろまとめると、ずばりチャイハロの魅力は何だと思いますか。

月ノ美兎:愛ちゃんがとにかくひどい目に合うんですけど、どんな境遇にいても自分の道徳心を曲げないからこそ、けっこう爽やかな終わりにつながるところですね。結局は自分次第というか、自分が正しいと思うことをやり通すことが大事なのかもしれないです。

ねとらぼ:いい話ですね。

月ノ美兎:愛ちゃんとお母さん以外はほとんどクズですけど、愛ちゃんはそういう人たちも最後まで信じる。お人よしだけど、だからこそうまくいくんです。

ねとらぼ:信じる心が重要と。

月ノ美兎:みんな最後は愛ちゃんに心を動かされてますからね。

(終わり)

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