GACKT 「みんなの背中を押せる男でありたい」 バースデーライブで45歳の誓い/レポート

GACKT 「みんなの背中を押せる男でありたい」 バースデーライブで45歳の誓い/レポート

■GACKT/【GACKT's -45th Birthday Concert- LAST SONGS】レポート
2018.07.04(WED) at 東京・新木場STUDIO COAST

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7月4日(水)、GACKTが45歳の誕生日に『GACKT's -45th Birthday Concert- LAST SONGS』を開催。海外のファンも含め、チケット争奪戦の末に集まった熱烈なファンが新木場STUDIO COASTを埋め尽くした。オープニングでは歴代のミュージックビデオが映し出され、 1999年26歳、2000年27歳というように年号と年齢を併記。2018年の現在に至り幕が下りると、豊かなドレープを施した白い衣装のGACKTが姿を現し、大歓声に包まれる。1曲目は、ソロ1stシングル「MIZERABLE」。軽やかに、時に力強く歌唱し、右手をパッと挙げて演奏を制止。場の空気を支配するカリスマ性を見せつけた。

「久しぶりだね。もうGACKTは声がガラガラですよ」とGACKTは苦笑交じりで挨拶。前夜のラジオ出演の後に高熱が出たそうで、万全のコンディションではない様子だ。しかし、「こんなカスカスの声でも、心の奥をドン!と(突きたい)」との意気込みを語った通り、この後のすべての瞬間において、全身全霊のパフォーマンスを繰り広げることになる。

1曲終わるごとにMCタイムが用意されていたのだが、「曲の説明は、まぁいいか。だって分かるんです。君たちがこの曲を愛してることを」との前振りから披露したのは、2009年のシングル曲「FLOWER」。GACKTはパンチを繰り出すボクサーのように仁王立ちして勇ましく歌い、間奏ではGACKT JOBメンバーも揃って激しくヘッドバンギング。抑えきれないトキメキが溢れ出すような、瑞々しい歌声を響かせた。

ここからはゲストを迎えた豪華セッションが展開。「O次郎くんです!」というボケで呼び込まれたのは、ゴールデンボンバーの鬼龍院翔(Vo)。鬼龍院は「出づらいです……(笑)」と困惑しながら、「僕、LOVERS(※GACKTファンの呼称)の皆さんを仲間だと思っているので。オープニングの映像も、『この時、この曲!』って」と見入ったと言い、GACKTへの憧憬を露わにした。

MALICE MIZER時代からの熱烈なファンであることを公言しているこの後輩に、「鬼龍院翔的GACKT曲ランキング」や、この後セッションする曲を、「曲名無しで表現して」などと無茶ぶりするGACKT。鬼龍院はたじろぎながらも、懸命に食らいつくガッツを見せる。

「まさかこの曲を翔と歌うことになるとは思ってなくて。(映画)『MOON CHILD』のエンディングでちょっと流れるよね?」(GACKT)、「17歳の時に試写会に行ってます!」(鬼龍院)といったやり取りの後、披露したのは「ASH」。CHACHAMARU(Gt)とYOU(Gt)がアコースティックギターでイントロを奏でる間、寄り添うように佇んでいた2人。GACKTは鬼龍院の肩を右手でポンと叩き、さり気なく歌い出しの合図を送っていた。やがてエレキギターの轟音とSato(Ba)が絡み合うヘヴィロックへとサウンドが変貌する中、鬼龍院はハイトーンヴォイスでGACKTとハモり、渾身のデュエットを聴かせた。

GACKTのラジオに15歳だった鬼龍院少年がメッセージを送ってきたこと、やがてゴールデンボンバーとして大ブレイクを果たした彼に、高級焼き肉店で27万円のワイン(※もっと高いワインもリストにあったが、GACKTは気を遣って選んだとのこと)を奢ってもらったことなど、2人は楽し気にトーク。「未だにあの(ワインの)瓶、飾ってあるもんね。それぐらいうれしかったんだよ」とGACKTは懐かしんだ。

続けて、「僕の中では自称“神曲”」との紹介から、「LOST ANGELS」をセッション。ドラマティックな物語世界を立ち上げるこの壮大な曲を、2人は交互に、サビはハーモニーを響かせながら、切々と歌い上げた。

「こうしてバースデーライブに駆けつけてくれた弟分キリショーに、大きな拍手を!」とGACKTは讃え、ハグと握手を交わした。鬼龍院は何度も何度も頭を下げ、ステージを走り去っていった。

続いて迎え入れたのは、YELLOW FRIED CHICKENz(以下、YFC)で活動を共にしたJON。GACKTはYFCのアルバムを未だ車に置いているという。「お気に入りの曲があるけれど、『もう歌えることはないだろうな』と思っていたら、こうして歌えるので幸せ。何年振り?」とGACKTが訊けば、「今日で6年ぶり!」と堪能な日本語で答えるJON。そう、解散ライブが日本武道館で行われたのは2012年のGACKTの誕生日だったのである。

背中合わせにピンスポットの中で立ち、2人が歌い始めたのは「YOU ARE THE REASON」。明るい光を感じさせるメロディーをテンション高く歌い、間奏では向き合って頭を激しく振った。ステージの様子が大写しになっていたスクリーンには、過去のライブ映像が一瞬挟み込まれ、時の流れを思わせた。2人は何かを掴もうとするかのように天に手を掲げ、熱唱した。

歌い終えるとYFCコールがすぐに起こったのだが、「こんなYFCコールを聞くとは思わなかったなぁ……YFCを体験したことのない人にとってはすごくいい瞬間だったんじゃないのかな?と。(YFCのライブに)来たことのある人もない人も、まだ聴いたことのない曲が1曲だけあって。このバンドの中で、すごく大切な曲をこのタイミングで歌えることが幸せ」と想いを語った後に、「NOT ALONE」を届けた。GACKTは自ら手拍子し、4つ打ちのリズムに乗せ、2人は声を重ねた。GACKTは眩い微笑みを浮かべ、心地よさそうに歌っていた。

ラストは2人が手をウエーヴさせ、観客もそれに倣う。JONとガッツリ抱擁と握手を交わし送り出すと、「ジーンと来ちゃったね。またこうやって一緒に歌えるとは思ってなかったからね」と感慨深そうにその余韻を味わっているようだった。

次はなんと、急遽スウェーデンから駆け付けたYOHIOが登場。初対面の時はまだ15歳だったそうで「今月で23歳です。早くないですか?」とGACKTに完璧な日本語で語り掛ける、金髪碧眼の若き才能である。YOHIOのステージにGACKTが出演したことがあり、共演は5年ぶり。

GACKTは「僕の中では一番年下の弟です。私見なんですけど、スウェーデンは美男美女の国。でも、かわいいからかわいがってるわけではないんです。彼の歌唱力と音楽性の高さが群を抜いているからなんです」と力説。「僕も生い先短いですから(笑)、彼のことも応援してあげてください」と会場に呼び掛けた。

セッションしたのは「サクラ、散ル…」。まずはYOHIOが透き通った美声でAメロを歌い始め、GACKTはBメロを力強く雄々しく歌唱、サビは2人で声を合わせる。2番は逆の順序でGACKTから歌い出し、気怠く妖しい美しさを醸し出すと、YOHIOは瑞々しい声で引き継ぎ、その後のハモリではそれぞれの表現力を全開にし、圧倒した。歌い終えると、飛びつくような勢いでYOHIOはGACKTをハグ。大きな拍手と歓声が会場に鳴り響いていた。

「この日のためにすごく練習をして、この曲を指定してまで来てくれた、大切な後輩です」との紹介から招き入れたのは、DIR EN GREYのShinya(Dr)。「Shinyaは、今日はしっかり歌の練習はしてきたの?」とGACKTが尋ねると、「……歌、ですか!?(笑)」とShinya。プライベートでも親交があり、GACKTのブロマガ公式チャンネルにも出演したばかり。

「Shinya、DIR EN GREYと合ってなくない? 他の人たちは激しいのに、一人だけいちご狩りみたいなキャラだよね(笑)」(GACKT)、「GACKTさんのせいで変なキャラが……(笑)。でも、内面は激しいので」(Shinya)と談笑し、場を和ませた。Shinyaがドラムセットに移動してスタンバイする間、ばる(Dr)に「Shinyaのドラムを横で見てていいよ。何が足りないか勉強して」(GACKT)とGACKT JOBメンバーに対する愛あるイジりも盛り込む。

「ずっと昔から応援してくれているファンのみんなに、今の僕のこの想いが届くことを心から願っています。『DEARS』」とタイトルコールすると、悲鳴のような歓声が湧き起こった。力を振り絞るようにして歌うGACKTの背後で叩き鳴らされるShinyaのドラミングは、美しい動きの中にも凄まじいエネルギーが迸っていた。曲への想いの強さ、そして、GACKTへの愛とリスペクトがひしひしと感じられるプレイは圧巻。セッションを終えると、ひらひらと手を振って可憐にステージを去ったShinya。熱い余韻はしばらく冷めやらなかった。

「『こんな人も繋がってるの!?』と言うかもしれないですけど、彼もまた、祝いに来てくれました」「カバーアルバムを出そうかと思った時があって、その時に彼の曲を僕はずっと練習してた」とGACKTが呼び込んだのは、シンガーソングライターのK。関根麻里との結婚を暗にほのめかし、「年下ばっかり幸せになりやがって(笑)」とGACKTがやっかむと、「自動的に(姑の)関根勤が付いて来る(笑)。週に9日ぐらい家に来ます(笑)」と笑わせた。

筋肉フェチだというKは、「ステージでリハーサルしてる時、さり気なく腕を触ってみたんですね。素敵でした!」と興奮気味に語った。ユーモアのあるKとテンポよく繰り広げられたトークの中には、笑いだけでなく、音楽家として互いに敬意を示し合う場面も。GACKTは「彼のピアノの演奏の上で歌うのがめちゃめちゃ気持ちいい」と絶賛。コーラスを取り止め、ピアノに専念してもらうことにした経緯を語った。いつかアルバムを一緒につくれたら、と2人は盛り上がり、KもGACKT曲のピアノを称賛した。

高熱で体調が万全ではない中、「僕の声は“築地市場”(のセリの声)に近付いて来てますが……(笑)。この曲がこの声で、Kのピアノでどんな風に聞こえるか、楽しんでください」(GACKT)とライブの一期一会を楽しんでほしい旨を語り、「LAST SONG」を2人で歌い奏でた。グランドピアノの奥に立って歌うGACKTは、たしかに苦し気ではあるものの、その歌声は切実な想いを表わしているようで、心震わせる力があった。

「Kのピアノは独特」とGACKTが称していた通り、ところどころジャジーだったり、端正な中にも遊び心を感じさせたり……個性的だが、あくまで歌に寄り添う思慮深さがある魅力的なプレイだった。GACKTを思いやるように時折温かい眼差しを向けながら、流れるように美しい音色を奏でていくK。2人が以心伝心の“デュエット”をしているようだった。

「なかなかいい45歳のスタートですよ」と、ここまでのステージを振り返ったGACKT。昔なら声が出ない状況に苛立ち暴れていたはずだが、今では「『こういうこともある、ある』と言えるようになったのも成長。大人になりましたね」と自身の変化を認めた。「誕生日、こんなに集まってくれるのが本当にうれしいわけです。いろんなところから集まってくれて、心から感謝しています」とファンへの想いを改めて述べ、「普段の声で歌いたかったけど……これはこれで、ライブだから。またリベンジね。いい歌を届けられるようにしたいと思います」との言葉には、フロアから「待ってる!」の声が投げ掛けられた。

「僕が一番、今まで大切にしてきた曲です。この曲で、自分がやりたい表現ができた」「四季のない国であっても、音から季節を感じてもらえる」と解説したのは、「雪月花 -THE END OF SILENCE-」。ピアノから始まりストリングスが重なって、やがて和太鼓を思わせるドラムが鳴り、GACKTの歌声が低く響き始める。バンド全体が華やかなアンサンブルを織り成す中、GACKTは身をよじらせるようにしながら、声を枯らして絶唱。2016年の『LAST VISUALIVE』のエンディングを思い起こしながら、時空を超えた壮大な物語世界を表現しきるGACKTの、音楽家としての、表現者としての凄みに震えた。<君に届きますように…>と命絶えんばかりに壮絶に歌い切った姿に、鳥肌が立つのを抑えられなかった。

本編が終わり、アンコールではケーキが登場、ストリングス隊を含むゴージャスなバンド演奏に乗せ、ファンが「ハッピーバースデー」を歌った。GACKTはろうそくの火を吹き消すと、再登場した鬼龍院翔に、「打ち合わせ外のことやるの、やめてもらっていいですか?(笑)」とクレーム。

「今日来られていない方から、コメントをいただいています」(鬼龍院)との前振りから、まずはHYDEのお祝いVTRが上映された。「ガクちゃん、お誕生日おめでとうございます」「この間ワインの格付けみたいなのやったんですけど、見事に外しましたね。いつも飲んでるワインが分からなかったっていうね(笑)」とマイペースに語るHYDEに、「(誕生日と)関係ねーじゃん(笑)」と噴き出すGACKT。

「最近会ってないけど、今度奢ってください(笑)」(HYDE)、「なんでだよっ! お前が奢れよ!(笑)」(GACKT)などと突っ込みを入れながら、心底うれしそうに笑顔でスクリーンを見上げていた。

続いてのメッセージはYOSHIKI(X JAPAN)から。「本当は25歳なんじゃないかな?って思うぐらい若い。GACKTのほうがしっかりしてるんだよな~」とほのぼのしたトーンで祝福メッセージを贈った。豪華な盟友2人からのコメント映像に、会場は大いに湧き立っていた。

「ありがとうございます……。最近思うんですよね。彼らもそうですけど、僕より年上なんですよ? 僕が20歳の時(にとって)は、YOSHIKIはすげぇ怖い人だったわけですよ。そういう上下関係の世界の中に僕は入れなくて、出だしを間違えまして」と、上京後、ヴィジュアル系シーンに居場所を見つけられなかった時代を回顧。若きGACKTは丸くなった今とは違ってトゲもあり、ケンカっ早かったという。

バンド時代を経てソロになり、「28歳ぐらいの時にYOSHIKIとロスでたまたま会って気が合って。その日のうちにシャンパンを2人で16本開けて」と強烈な一夜を過ごし、それを機に互いをYOSHIKI、GACKTと呼び合う仲に。「YOSHIKIとバンドをやろう(S.K.I.N.)という話になった時もタイミングが悪くて、SUGIZOと喧嘩した後だった」のだという(しかし、ある年の誕生パーティーにSUGIZOが現れ、パワーストーンをプレゼントされて仲直り。今も家に飾っているそう)。

そのように紡がれていった仲間との結びつきを述懐しながら、「大人になるっていいですね」とGACKTはしみじみ。自分自身も後輩に対しての意識が変わったという。

「慕ってくれてありがたい。彼らに何かできることがあればしよう、と思えるようになったのも、こうやって一つ一つ年を重ねたからかなぁって。『年を重ねることはそんな悪いことじゃないな』と思うようになりました」

「みんながあっての僕なのかなって。柄でもないかもしれないけど、本当にありがとう!」

「みんなと1年1年ここまで歩いて来られたこと、誇りに思います。みんなが僕にとっての歴史。みんなにとっての僕が、思い出の1ページ。みんなの背中を押せる男でありたいなと思っています。これからもよろしく!」。

想いのこもった長い謝辞の後、「いい弟がたくさんできたなぁと思います」と、駆け付けたゲストたちに改めて感謝を示しながら、最後は、「縁起が悪いと言われるかもしれないけど、もし僕がいなくなっても、この曲を聴いて一歩を踏み出せるような曲」として、「P.S. I LOVE U」を届けた。今にも泣き出しそうなほどの切なさ溢れるファルセットが胸を締め付ける。目の前のファンに語り掛けるように、あるいは、未来の聴き手に向けて遠く想いを放つように、熱く歌い切ったGACKT。眩い光に包まれてステージの奥へと消え去っていく姿を、観客はじっと見守っていた。

かつてGACKTに憧れた少年や、バンド活動を共にした仲間、互いの音楽をリスペクトし合うミュージシャン……ゲストの一人一人と紡いだ物語は、言葉による説明以上に、セッションした曲の短い時間の中に凝縮・昇華されていた。高熱により枯れた声を本人はしきりに悔しがってはいたものの、歌声はエネルギーに溢れ、伝わって来る想いが充分にあった。2019年にはソロデビュー20周年を迎えるGACKT。これから彼は、誰と、どんな新しい物語を描いていくのだろうか?
(取材・文/大前多恵)

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