飯豊まりえ&武田玲奈、中川大志…気鋭の映画監督・井口昇が語る若手俳優たちの魅力

いぐち・のぼる=1969年6月28日生まれ、東京都出身

航海士を目指す坂本真鈴(飯豊まりえ)と石川燕(武田玲奈)の奮闘を描き、好評を博したドラマ「マジで航海してます。」(2017年MBS・TBSほか)の続編となるセカンドシーズンの放送が、まもなくスタート! 前シーズンに引き続いて演出を手掛けるのは、「片腕マシンガール」(2008年)、「富江 アンリミテッド」(2011年)、「ヌイグルマーZ」(2013年)など、映画監督としても知られる井口昇氏だ。「監獄学園‐プリズンスクール‐」(2015年MBS・TBSほか)や、映画版が10月12日(金)に公開される「覚悟はいいかそこの女子。」(2018年MBS・TBSほか)など、TVドラマの演出も数多く手掛ける井口監督に、「マジで航海してます。~Second Season~」の見どころをはじめ、映像作家としてのポリシーや、今後の活動の展望などを語ってもらった。

井口昇氏の監督最新作「マジで航海してます。~Second Season~」。昨年放送された同名作品の3年後を描く、待望の続編

■ 飯豊まりえさんと武田玲奈さんのコンビにお芝居をつけていくのが楽しくて仕方ない(笑)

──「マジで航海してます。~Second Season~」が、いよいよMBSで7月29日(日)からスタートします(※TBSは7月31日[火]スタート)。

「僕の作品は、いわゆるファンタジーやホラーが多く、ストレートな青春ものは、それまでやったことがなかったんです。だから、前作で青春ドラマをやらせてもらえて本当にうれしかったんですけれども、それが好評をいただいて、セカンドシーズンへとつながったということで、喜びもひとしおですね。

ファンタジーやホラーの作品を演出する場合、撮影や編集のテクニックだったり、特殊メイクだったり、どうしても“ギミック”の部分が先に来るんですが、青春ドラマの場合は、役者さんたちのお芝居という“心理”の部分が優先されるんですね。実際、前作の『マジで航海してます。』でも、役者さんから思わぬ芝居がいくつも出てきて。それがすごく楽しかったし、僕自身の演出のタッチも、それまでとはちょっと違うやり方を試すことができたんじゃないかと思っています」

──前作は、撮影の段階で既に手応えがあったということですか?

「そうですね。少なくとも、あまり見たことのないタイプの青春ストーリーになるだろうな、ということは感じました。何より、主演の飯豊まりえさんと武田玲奈さんのコンビにお芝居をつけていくのが面白かったんですよ。5話で終わってしまうのがもったないなと思ったくらい。ですから、今回のセカンドシーズンが正統の続編というか、前作からの“続き”の物語だということも、僕にとっては大きくて。飯豊さんと武田さんのその後を撮ることができるのが、楽しくて仕方ないんです(笑)」

──では改めて、飯豊まりえさん、武田玲奈さん、お二人の魅力とは?

「武田さんとは『監獄学園‐プリズンスクール‐』で初めて仕事をして以来、今回が4作目になります。『監獄学園』のころは、演技の経験があまりなかったので、『こう動けば、こう見えるよ』といったところからアドバイスしていたんですが、それから年々、プロの役者さんとして成長してきていますよね。お芝居の引き出しが増えたなというのはすごく感じます。

飯豊さんは、前回の『マジで航海してます。』で初めてご一緒したんですが、そのころから引き出しの多い役者さんでしたね。自分で事前にしっかりと真鈴のキャラを作ってきて、その上で、現場で僕ら演出サイドとディスカッションをしながら、さらに真鈴という役をふくらませていくんです。とても感心しました。

そんなふうに、役者さんとキャッチボールしながら、キャラクターの“心理”をみんなで作り上げていく面白さは、今回のセカンドシーズンの現場では、より深く感じられるようになっています。お2人の新たな引き出しを開けて、今まで見たことのない彼女たちの魅力を引き出せたらと思いますね」

■ 大人の表情と、初々しさ。2人のヒロインの成長を絶妙なバランスで描くことに注力しています

──飯豊さん演じる真鈴と、武田さん演じる燕は、前シーズンでは学生でしたが、セカンドシーズンでは社会人となり、それぞれ航海士、機関士の仕事に就いています。そのあたりに関して、演出する際に気を付けていることなどはありますか?

「意識しているのは“3年後”という部分です。学生だった2人が卒業して、働き始めてから、既に3年が経っている。つまり、真鈴と燕は20代半ばになっていて、飯豊さんも武田さんも、実年齢より上の役を演じているんですね。ただ、それでも“青春の香り”は漂わせたいというか、この作品は青春ドラマなんだということは忘れないようにしたい、というのがあって。真鈴と燕は、それぞれ社会人として傷ついたり悩んだりするわけですが、そんな2人のヒロインの成長を、大人としての表情も見せながら、だけど初々しさも消えていないという、絶妙なバランスで描くことに注力しています」

──では改めて、「マジで航海してます。~Second Season~」という作品の見どころを教えてください。

「やはり真鈴と燕の成長ぶりと、2人のやりとりですね。前作ではずっと行動を共にしていた2人ですが、今作では、航海士となった真鈴が船の上、機関士になった燕が陸上と、別々の場所で行動することになる。その中で、2人の仲の良さをどう見せていくのか。演出する上で、そこにかなり工夫を凝らしています。あくまでも、真鈴と燕の2人の物語なんだというところは忘れてはいけないと思うので」

■ 中川大志くんは、芝居を離れたところでも好青年。もし僕が女子だったら、確実に惚れてます(笑)

──ところで井口監督は、今作の前に同じ枠で放送されていた「覚悟はいいかそこの女子。」の演出も手掛けられていますね。

「まず映画の話が先にあって、そのスピンオフとして、ドラマ版もどうですかとオファーをいただいたんです。僕は常々、あまり自分で枠を決めず、いろいろなジャンルにチャレンジしたいと思っていて、少女マンガ原作の作品も挑戦してみたいと思っていたので、非常にありがたかったですね。

基本、僕が作るものって、客層の9割は男子なんですよね(笑)。だけど、この『覚悟はいいかそこの女子。』は、女の子に見てもらいたいという明確な意識の下で作った作品なんです。とはいっても、もちろん男性にもシンパシーを感じてもらいたいとも思っていて。プロデューサーも脚本家も女性だったので、打ち合わせのときに、自分の高校時代の思い出話も含め、“高校生男子あるある”をお話ししたり (笑)。そういうエピソードを入れつつも、基本的にはやはり、女性たちが『○○くん、カッコイイ!』と言いながら見てくれるような作品にしたかったので、そのバランスを取るのが難しくもあり、楽しかったですね」

──主演の中川大志さんは「監獄学園」でもお仕事をされていますが、どんな印象をお持ちですか?

「『監獄学園』のときは、ペットボトルを股間に付けて半日間撮影したんだけど、今だったらファンのみなさんが許してくれないだろうなぁ(笑)。それ以来の仕事でしたが、オーラも増していて、『本当に君、10代か?』というくらい(笑)、すっかり大人の役者さんの雰囲気で。座長として、みんなを和ませながら現場を引っ張っていってくれました。お芝居に関しても、かなりディスカッションをして、『監獄学園』のとき以上に、芝居の“間”の駆け引きも緻密に作りましたし、まるでジャズのセッションのような感覚で撮影をすることができました。しかも中川くんは、芝居を離れたところでも、本当に好青年なんですよね。もし僕が女子だったら、確実に惚れてますよ(笑)」

■ 人間の本質は、フィクションの世界でこそ描けるんじゃないか。それがフィクションの役割じゃないかと思うんです

──先ほど、「いろんなジャンルにチャレンジしたい」とおっしゃっていましたけれども、今後の活動についての展望は?

「理想を言えば、僕が昔から手掛けてきたファンタジー、ホラー系の作品と、『マジで航海してます。』のようなポップな作品を、交互にやっていきたいですね。僕が作るファンタジーやホラーって、どうしても過激な印象を持たれがちで。もちろん過激なものも大好きなんですけど、映画少年として育った自分は、ジャンルを問わず、さらに言えば、映画もテレビの区別もなく、全ての映像作品が好きなので、監督としてもオールジャンルでやっていけたらと思っています」

──ちなみに、ドラマと映画とでは、演出する上で何か違いはあるのでしょうか?

「テレビというのは本来、特定の視聴者に向けられたメディアではないので、ドラマを演出するときは、誰が見ても楽しめるように、いかに分かりやすく伝えるかを念頭に置いて、見せ方や切り口を考えています。その点、映画の場合、特にインディーズの作品を撮るときは、よりコアな作家性を出していこうという意識はあるかもしれませんね。

とはいえ、あくまでも作品を届けたい対象が違うから手法が異なってくるだけで、作り手としてのテンションは変わらないですよ。映画もドラマも、根っこの部分は同じですから」

──では、今後取り上げたいと思っている題材やテーマはありますか?

「一番やりたいのは、家族の話なんです。僕の作品は、表向きはホラーだとしても、家族の関係性というのは、常に裏テーマとしてあるので、そこは今後も追求していきたいなと。それと、性的マイノリティーの話にも興味があります。

あとは、犯罪をテーマにしたものですね。ここ何年かインディーズの映画作品という形で、こだわって描いている“加害者と被害者の話”を、一般の商業作品でもアプローチできたらと考えていて。一つの犯罪における、決して報道されない部分を描いてみたいんですよ。例えば、被害者側の事情って、ニュース番組なんかでは、デリケートな本音の部分まで掘り下げることはなかなか難しいと思うんです。つまり、個人的な感情に根差した当事者の本音は、ニュースやドキュメンタリーで伝えるには限界があるんじゃないかと。でも、映画やドラマというフィクションだったら、そこを補完できると思うんですよ。むしろ、人間の本質みたいなものは、フィクションの世界でこそ描けるんじゃないか、それを描くこともフィクションの役割なんじゃないかと思うんです」(ザテレビジョン)

井口昇