大ベテランのゴスペラーズ “文系な佇まい”と変わらぬプロ根性――近田春夫の考えるヒット

7/25(水) 11:00配信

In This Room(ゴスペラーズ)/Summer Time(MADKID)

 自分の聴いている新譜の範囲など高が知れているとは思うが、洋の東西を問わず、和声を魅力の中心に据えた、俗にいう“コーラスもの”が、昔ほどリリースされていないのはたしかだろう。

 そういえば、いっときお茶の間のTVでよく見かけたアカペラの人たちも、みんな何処へ行ってしまったのか……。

 そんなことをぼんやりと考えながら、ゴスペラーズの新曲を聴いていた俺であるが、ふと気になって、彼らがいつこのグループを組んだのか調べると、'91年だった。もう随分になる。その間、いわゆる人気者的な派手派手しい展開ではなく、あくまで職業的技術で商売をするスタンスを崩さずに活動を続けてきた訳である。これは業界の全体的ありようや傾向など見るにつけ、なかなか容易ではなかったろうこと想像に難くない。

 さて『In This Room』を耳にして早速感じたのが、普通の意味で、今の時代のアフリカ系アメリカ人――韓国人もそうすかね?――が好む、いわゆる“ヒップホップ以降のR&B”色の大変濃いサウンドだな、ということであった。タフ、ダーク、ヘヴィといった印象を強く残すべく作られる音響なので、かつてのソウルミュージックに漂っていたような、ロマンチックな要素などは極力排除されている。

 あっそうか。クレジットを見て納得。アメリカで成功を収めた、韓国出身のプロデューサーの作るトラックだった。

 ところで、歌は世につれと昔から申すけれど、韓国やアメリカなどに比べれば、我がjpopのサウンドにはまだ何かしら感傷的な部分が残っている。それが何を意味するのか、時代/社会との関係についての言及はこの際置けば、言語ことにその“響き”の問題というのはあるだろう。

 口語の日本語の耳触りは、いまのところまだ(だいぶん刺々(とげとげ)しくはなりましたが)どちらかといえば柔らか/穏やかな部類だ。そうした聴覚的特性と、今様R&Bの、いってみれば“こわもて”な音像との相性とは果たして如何なものなのか……と? 楽曲を聴きながら思ったことのなかには、実はそれもあった。

 映像では、まさにサウンドプロダクションにふさわしい、大ゴージャスなベッドルームを模したようなセットのなか、ゴスペラーズが切々と愛を歌い上げるのだが、その決してフィジカルではないどちらかといえば“文系な佇まい”が、エロティック濃厚過ぎるような背景に対し、本場の人たちみたいにはしっくり呼応してくれてはいないようにも映る。それと同じことを私は、音とコトバの組み合わせにも、覚えてしまったのかも知れぬ。

 という感想はあるにせよ、最後に是非書いておきたいのが、大ベテランにもかかわらず、決してノスタルジー方向には行かず、恐れずに新しさを求める彼らの姿勢のことだ。相変わらずのプロ根性。その頼もしき哉! なのである。

 MADKID。

 今年のような夏らしい夏にはこういう曲調悪くないすね。

近田 春夫

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