最上もが、話題の作家・一木けいと対談「あの頃には戻りたくない」

 シンガー・ソングライターの椎名林檎が、帯文で「私が50分の円盤や90分の舞台で描きたかった全てが入っている」と激賞するほど、読者の心をつかんで離さない一木けい氏の小説家デビュー作『1ミリの後悔もない、はずがない』(新潮社)。全5編立てで構成されている同書を読んで「一気に読んで面白かったけれど、読み終わった後、落ち込んで暗くなりました」との感想を寄せたのが、元でんぱ組.incで現在、ソロとして活動する最上もが。このほど2人の対談が実現し、同書の話を中心に、ファンへの向き合い方、表現をする上でのスタンスなどを語り合った。

【写真】椎名林檎も嫉妬する表現力! デビュー作に込めた思いを語る一木けい氏

 以前、一木氏に話を聞いた時にこんな言葉を残していた。「この本は、この先いいことなんかないって思っている人に読んでもらいたいです。この作品のように一筋の光がいつ出てくるかわからないし、もしかしたらもうあるかもしれない。私だって、林檎さんが帯を書いてくださるなんて妄想すらしなかったことが起こっていますから。生きていればいいことがあるよっていうことが伝わればうれしいです」。最上は「失礼になったらどうしようと思ったのですが、あんまりウソをつきたくなかった」と率直すぎる感想を残した理由を語った上で、こう切り出した。

 「僕が感じた後味としてはハッピーエンドとは言えなかったんですけど、その中で大切なものを見つけたりする部分もあって…気になったところを携帯にメモしました。最後のシーンはいろいろ考えをめぐらせてしまって、何回も読み返してはボロボロ泣いて、小説の中の人になってツラい気持ちになっていましたね。僕はけっこう似たような経験をしてきたので、本当にしんどい方が混ざってきちゃって…ファンの子もそういう子が多かったので、この本を勧められるかと言ったら『ハッピーな気持ちにならないけど、読みたい子がいたら、ぜひ』っていう言葉になっちゃいます。学生時代のドキドキ感とかもあったりして、なつかしくもなりました」。

 一木氏は「最後の話を書かないと、読者が消化不良を起こすんじゃないかという部分もあって、書き進めました。もがさんは、いろんなことを考えて言葉にするのがものすごくお上手ですよね。携帯にメモしたとおっしゃってくださいましたが、私はもがさんこそたくさん書いていただきたいと思っています。もがさんのブログを拝見して、胸がいっぱいになってしまって…読者の方にすごく親身になって書いていらっしゃいますよね」としみじみ。そこから“ファンとの距離感”へと話が進む。

 「僕は一時的な感情は続かないとずっと思っているので、ファンの方が『好きだ』と言ってくださるのも同じで『絶対、もがちゃんしか見ないから』とか言わなくていいよ、あなたはいつか僕以外の人も好きになるから…って言いたくなっちゃうんです(笑)。最初の頃は、その言葉を信じていたんですが、ファンの方が、ほかのアイドルさんとツーショット写真を上げているのを見た時に、すごく落ち込んでしまって…。一途に応援してくださいってこっちが言えるわけではないし、その恩返しができるわけでもない。ファンの方がついてきてくれるのはうれしいし、全力で楽しませてあげたいっていう気持ちはもちろんありますけど、それ以上何かをしようとかしてもらおうとか思わないです」(最上)。

 言葉尻だけを捉えると冷めたスタンスのように聞こえるが、その真意を探ってみると「期待しても結局ヘコむのがわかっているから、怖いから自己防衛ですね」とポツリ。その奥に秘めている思いも打ち明けた。「でんぱ組を脱退したくらいの時は記憶も定かではなくて、とにかく記憶が飛んでほしいと思いました。いろんな人に迷惑をかけて、お仕事もできなくなるので、その状況が良くないこともわかっていました。今やっと向き合ってきているのですが、あの頃には絶対戻りたくないと思うので、そうしないためにはどうすればいいかと言うと、人を信用しない、期待しない、そこに託さない、すべて自分のためにやろうと。人は誰かの感情に動かされてしまいますが、本来は自分の感情をひとりでコントロールできる生き物だと思います。衝撃的な出会いや恋愛をするとコントロールできなくなると思うので、そうならないように制御しています」。

 同書では“生”や“愛”が大きなテーマとなっているが、同じくらい一木氏が重きを置いているのが“家族”で、以前のインタビューでも「今回の小説も『恋愛小説』と書いていただいたんですけど、私の中では重たくて暗い家族小説かなという想定でした」と話している。3人兄妹の真ん中で育ってきた最上は、自身の家族との関係をどのように考えているのだろうか。「僕は自分の家族は絶対裏切らないと思えるので、信用していますね。きょうだい喧嘩はありますけど、根っこは仲良いです。ただ、心をさらけ出すかといったら、それはしないですね。絶対に理解されないことがあるというのもわかっていたし、そこを共有する必要もないし、親もアドバイスをしてあげたいけどできないということもあると思うので」。

 一木氏が紡ぎ出した物語をきっかけに、最上の偽りない思いが引き出された今回の対談。一木氏が「もがさんのブログも、そのほかで書かれている文章も大好きです。すごく切実で、この文章を待っている人が大勢いると感じました。これからも楽しみにさせていただきます」と呼びかけると、最上も「こちらこそ、次の小説もぜひ読ませてください!」とエールを送り合って、対談を締めくくった。 </span>

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