映像に華を添えるミュージカル”フォーマット”、増加の理由とは

 今月の6日、13日に放送された『2017 FNS歌謡祭』(フジテレビ系)で起きたある“異変”がテレビ業界で話題となっている。第1夜では、横山だいすけと乃木坂46の生田絵梨花による映画『アラジン』の「ホール・ニュー・ワールド」のデュエット、第2夜では知念里奈と新妻聖子による『レ・ミゼラブル』のメドレーと、2夜とも“ミュージカル”企画がそれぞれ瞬間最高視聴率を記録したのである。そのほか、ここにきて歌番組に限らずCMやドラマなどでも、ミュージカル企画が急激に増えているようなのだ。なぜ、今ミュージカルなのか? 映像に“華”を生み出すミュージカル企画の効用と可能性について考えてみたい。

【写真】乃木坂・生田、山崎育三郎らTVを彩るミュージカルスターたち

■各メディアの“ミュージカル推し”で新たな才能の開花も

 今年の『FNS歌謡祭』では、NEWSによるその名も「NEWSICAL」が披露されたり、先の知念や新妻に加え、石丸幹二、山崎育三郎といった日本ミュージカル界のスターたちによるミュージカル・スペシャルメドレーが繰り広げられたりと、番組自体が壮大な“ミュージカル推し”となっていた。

 実力派歌手が集うミュージカル企画は高いレベルが要求されるが、“だいすけおにいさん”で知られる横山がミュージカルの対応に優れているのは当然として、歌って踊れるアイドルグループの一員である生田も、その高い能力を発揮するあたりは、当企画は新たな才能を引き出すことに成功したと言える。

 また、大人でも楽しめる本格的な歌番組とされる現在のFNS歌謡祭は、全体的に視聴率に苦戦している音楽番組の中でも健闘していると言え、特にミュージカル企画は外すことのできない人気コンテンツとなっているようだ。8月に放送された『うたの夏のまつり』(同)と同様のディズニーミュージカル企画を展開するところに視聴者の反響の高さがうかがえる。ミュージカルという形式自体、生歌と歌手本来のパフォーマンスが番組に華を添えるほか、人気歌手同士のコラボが実現できることでもゴージャス感を演出しやすいのだろう。

■『ラ・ラ・ランド』の公開以降、急激に増加したミュージカルフォーマット

 かつては、日本のミュージカルと言えば一連の劇団四季による作品のイメージが強く、一般的にはどこか敷居が高かった面もあった。しかし最近では、新妻がバラエティ番組でぶっちぎりの歌唱力を見せつけたり、山崎がドラマで俳優として出演していたりと、ミュージカル俳優がミュージカル“以外”の分野で活躍することが増えてきた。

 また、人気のマンガ作品が、若手俳優らの手によってミュージカル仕立ての“2・5次元舞台”となって若い層に訴求力を持つなど、ここ最近はずいぶんとミュージカルとの距離が近くなってきているのである。そして今年2月、世界的な大ヒットとなったミュージカル映画『ラ・ラ・ランド』が日本でも公開されたことによって、さらにミュージカルへの注目度が高まったと言える。

 ミュージカルならではの群像劇の華やかさや緻密に計算されたドラマティックな構成、短い尺で観客にインパクトを与えることができるといったメリットもあり、ミュージカル企画に映像クリエイターたちがこぞって熱い視線を注ぎはじめたのである。

■歌番組だけじゃない!? 今やCM、ドラマにも波及

 このミュージカルブームは今、音楽番組以外、特にCM業界にも波及している。トヨタ「ESQUIRE(エスクァイア)」のCMでは、長谷川博己が歌にダンスと、大人の魅力をたっぷりと披露。また、PS4のCM「できないことが、できるって、最高だ。2017」でも、CGを駆使した本格映画さながらの豪華な劇場型ミュージカルで、人気俳優・山田孝之の芸達者ぶりが発揮されている。モデルの滝沢カレンが登場するアクエリアス のCM「1日分のマルチビタミン イイカンジ編」も、出演者が多く王道のミュージカルだ。一方、池田エライザの「TSUTAYAプレミアム」のCMは出演者こそ少ないが、ミュージカル風の演出をすることでかわいらしさを演出している。さらには、Nintendo Switch「スーパーマリオ オデッセイ」のCMでは、あのマリオ(CG映像)が実写のダンサーをバックに踊って話題になるなど、最近のミュージカル仕立てのCMを挙げれば枚挙にいとまがない。

 また、今年の夏クールに放送されていたドラマ『ウチの夫は仕事ができない』(日本テレビ系)では、妻役の松岡茉優が夫の錦戸亮のことを妄想する際に、なぜかミュージカル調になっていたが、状況説明としてはとてもわかりやすく、ちょっとコメディっぽいところもドラマの中のいいスパイスになっていた。さらに、登場人物が突然踊って歌い出すということ自体が、俳優たちの意外な一面を覗けるようでもあり、ちょっとしたプレミア感もあったのである。

■日本人の文化には合わないとされてきたミュージカルが、ついに定着!?

 ミュージカルシーンをけん引する“プリンス”こと山崎育三郎は、活動の幅が広がっていることについて、過去のインタビューで次のように明かしている。「ミュージカルに縁のない方との出会いが増えていく中で、もっと皆さんに気軽に僕の声に触れていただくきっかけがあればいいと思ったんです。僕がミュージカル以外の世界に飛び込むことで、従来のファン以外にも、ミュージカルに興味を持ってもらえるきっかけになるかもしれないと思った」(山崎育三郎)。さらには、ミュージカルファンを増やすための新たなチャレンジとして、井上芳雄、浦井健治のミュージカル俳優でユニット「StarS」を結成し、3人で歌うコンサートを2013年に武道館で開催といった取り組みも行い、ミュージカルのすそ野を広げる活動を続けている。

 かつてタモリは、“唐突に歌い出すミュージカルが嫌い”と公言しており、たしかに多くの日本人がどことなく気恥ずかしさを感じていたことも事実だろう。しかし、ここにきてミュージカルに対する日本人の抵抗感はほとんどなくなった。そして、石丸や山崎らの“ミュージカル俳優”のみならず、ミュージカルに対応できるタレントが実は多数存在していたことも、企画の増加に一役買ったのではないか。舞台作品も多いジャニーズタレントはもちろん、生田のように歌って踊れるグループアイドル所属のタレントがまだまだいることを思えば、今後もミュージカル企画は増えこそすれ、減ることはないと思われる。

 形式としてすでに華やかさやインパクトを備えている“ミュージカルフォーマット”は、これからも多彩な映像ジャンルへと広がっていき、さらなる進化を遂げる可能性を秘めているようだ。 </span>

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